〔コラム〕渋沢栄一の精神とインデックスファンドの警告について

こんにちはFPの森次です。今回は、近年爆発的に流行っている投資信託の中の『インデックスファンド』についての警告を、SDGsに絡めて書きたいと思います。

インデックスファンドとは

そのファンドが指標とするベンチマークを指数化し、同じ動きを目指す投資信託です。わかりやすくいうと、例えば日本株なら日本株という場所を決めて、その全体に投資することで日本株全体の動きに連動させていく投資方法です。そのほとんどをコンピュータがやってしまうので、ファンドマネージャーの人件費などが掛からず低コストを実現できます。近年は積立NISAやiDeCoなどの追い風や、コスト=悪の風潮があり、爆発的に人気があります。逆の言葉で、ファンドマネージャーが独自の哲学と分析に基づいて投資する投資信託をアクティブファンドと言います。


大河ドラマ『青天を衝け』が始まりました。主人公は渋沢栄一です。

近年この渋沢栄一の功績が見直されています。500近い会社を立ち上げ、現代日本経済の基礎を造ったと言っても過言ではない偉人ですが、彼は資本主義という言葉を使わず合本主義という言葉を使い、著書において「論語と算盤は両輪、遠くて近いもの」と、説いています。利益を出す(算盤)のはあくまで手段であり目的ではない。目的は長く社会が繁栄することであり、そのために企業は、目先の利益を生み出すだけでなく、社会的意義があり正しい道理(論語)が必須。一見遠回りのように思えるかもしれないけどこれこそが『合理的経営』だと言っています。

一方、近年流行っている社会的活動SDGs

国連が定めた2030年までに世界がより良くなるための持続可能な開発目標です。

この手段の一つとして『ESG投資』というものがあります。

出典:GPIFホームページ

ESG投資とは・・・「環境・社会・企業統治(コンプライアンスとリスクマネジメント)」を数値化して、その部分で優れた企業に投資していく投資方法です。この部分に強い企業は社会的意義がありこの企業にお金が集まれば社会が良くなり、結果投資家も長期的にリターンを得やすいという考えの投資手法です。このような哲学に基づき分析し投資するのでアクティブファンドに分類されます。

同じ時期に『渋沢栄一』と『SDGs』が注目されているのは、これが今の社会の流れなのかもしれません。目先の利益を追い求めどんどん広がる貧富の差、資本主義への痛烈な批判が背景にあるように思えます。

近年の台風や水害などの天災を見ても、目先の利益だけを追い求めていては、結果廻りまわって長期的に利益を上げ続けるのは難しいでしょう。遠回りであっても環境に配慮した形で利益を考えなければいけません。

まさに渋沢栄一の「富をなす根源は何かといえば仁義道徳。正しい道理の富でなければその富は完全に永続することができぬ」という言葉に現れています。

さて、SDGsの手段として最近よく耳にする『ESG投資』ですが、これって特別なことでしょうか?

長期投資において、その投資先が長く利益を出し続けるかは最重要ポイントです。そのためには、企業の体制や社風、人材や経営方針、取引先や社会貢献度など、あらゆる観点から分析するはずです。例えば、今は利益が上がっているが、リスクマネジメントやコンプライアンスを後回しにしている会社ならどうでしょう?十年後も今と同じように利益を上げ続けられますか?これをESG投資的に表現すると、G(ガバナンス)です。

つまり、ESG投資で言われていることは、投資家にしてみたら当然の分析材料でいまさら言う事でもないでしょうとなるわけです。

ある投資会社の投資信託を運用するファンドマネージャーが、銘柄の選定をするときに使う指標がこちらです。

この中で、いわゆる決算書や過去の成績など、数値化されているものは収益力のみで、仮に数字だけを追いかけていたら、いかに氷山の一角しか見ていないかがわかります。

企業にとって最大の財産は『人』だと言われていますが、企業から『人』を排除し数値化されたものだけを見ていては、その企業の本当の価値はわかりません。当然今は良くても長期的にその企業が成長し続けるかは疑問です。

そして、近年爆発的に流行っているインデックスファンドです。

これはいくつもの企業の数字だけを取り出して全体を指数化し投資しています。

たしかに長期的にみればコストは安いほうが良いに決まっていますし、過去の実績的にも申し分ないと思います。ただ、ここまで流行るとどうでしょう。例えば、不祥事を起こしブラック企業であることがわかった企業の株を買いたいですか?おそらく誰も買いたがりませんので、通常だとその企業の株価はとことん値下がりするはずです。ところがインデックスファンドはシステムとして、そういう企業の株も含め全体を買い支えてしまいます。

つまり、本来下がるはずの企業の株価がそこまで下がらずに、割高な株価まで買ってしまっているのが現在のインデックスファンドです。逆にアクティブファンドのファンドマネージャーにしてみたらそういう株はすぐに売っておきたいと思うはずです。インデックスファンドが買い支えてくれているおかげで株価が下がらずに売れるのでラッキーですよね。あるアクティブファンドのファンドマネージャーが、今はインデックスファンドが流行ってくれているから仕事がし易いとおっしゃっていましたが、これがまさにですよね。

この答えがどう出るかは10年以上経たないとわかりませんが、空前のインデックスファンドブーム。少し警戒が必要だと思いましたので取り上げさせていただきました。

渋沢栄一が提唱しているような利他の精神は、元来日本人が得意とする精神です。

そして、長期投資においても、社会の事を考える利他の精神を持つことが成功の秘訣です。つまり日本人は元来長期投資が得意なはずの文化歴史を持っているはずなのです。ただほとんどの日本人は今まで投資について間違ったとらえ方をしてきました。

それがこのタイミングでSDGsなどを通じて繋がってきたのはとても興味深いと思います。

少子高齢化などマイナスなイメージが強い我々の将来ですが、一人一人がしっかりとした投資の知識を身につけ豊かになることで、結果、良い企業が成長し、国が豊かになっていくのではないでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございます!

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